【録音と生音の境界が溶ける】Rosenkranz RK-Silver/KS レビュー

これはすごい、と驚いた。正直、引いた。

しょせんイヤホンなんて、ヘッドフォンみたいな大型ドライバーは積んでいないしスピーカーみたいなサイズ感もない。悪く言ってしまえば、安いものだろうと高いものだろうと、あらゆる音楽体験の中ではイヤホンの差異なんてわずかなものであるとどこか感じていた。実際、SE215とEmperor(EmperorではなくともEtoilleやOdinでもMacbethでもいい)は確かに音が違う。高域が刺さらなくなって余裕が出たり低域がよく出るのに他の帯域にかぶらなかったり音は近いまま音場が広がったりする。もちろんそれは変化ではあるが、わからない人はわからない(そういう意味ではハイエンドイヤホンなどは高貴で崇高な趣味である)。悪く言ってしまえば、価格に対する変化幅は大きくない、ということである(あくまでも個人的所感です)。イヤホンで聴いている以上はそういうものであり、それが同時にイヤホンという機材の範疇であり限界であると思っていた。Rosenkranz RK-Silver/BS(VerUP)によってそれに対する脅威を感じ、もはやイヤホンとかヘッドフォンとかスピーカーとかではなくBSでなくてはならないのではないかと感じたが、KSはその上をいった。聴こえてくる音が、この小さな純銀の筐体から出ているとはにわかには信じがたかった。

誤解を恐れずに言えば、「録音と生音の境界が溶ける」とは普段この耳で直接聞こえてくる音が聞こえるということである。ひとことで言うとそれがRosenkranz RK-Silver/KSのレビューである。
ここからは、レビューという名の殴り書きである。なお、レビューは、ケーブルHP-100millon/Sol(3.5mmアンバランス)に音響核Penetrated Rectangleを装着し、 エレコムの高耐久のLightning変換アダプタ(赤)、iPhoneXrという環境で行ったものである。

わたしは普段から同社のRK-Silver/BS(VerUP)を常用している(ケーブルはHP-Tinned Flex/2を使っている)。BSとの違いで言うと、すべての次元がさらに1段階(2段階?3段階?)上がった。実体感がさらに強まることによって、さらに高次に、さらに自然に、音楽を味わうことができるようになった。平たく言えば、”生々しい”という表現に尽きる。より積極的に言うのであれば、”生である”と言っても過言ではない音源もある。本当に、同じダイナミックドライバーであるとは信じがたい。このレビューを読むような方はご存知のことと思うが、Rosenkranzというメーカーは、特定の帯域を強くしたり音場が広げたり解像度を上げたり、といった部分的で表面的なチューニングアップを行うことはない。あくまでも、音楽を音楽として聴き手に届けるためのその程度を改善し、その方向性をより深化させるのみである。Rosenkranz RK-Silver/BS(VerUP)の時も実体感というものを垣間見て絶賛した。KSとの比較において言えば、BSでは全ての音でそれを感じられたわけではなく、一部の音や一部の録音においてそれを垣間見ることができた、という範囲であった(それでも、それができるのはこのメーカーのシルバーイヤホンのみであると感じている)。BSからKSへの変化を違いとして言えば、一部の音でではなく”すべての音”で、②聴こうと故意に意識を向けるとそう聴こえるではなく”特別な注意や努力をせずとも勝手に”そう聴こえる、という違いがある。

生々しいと表現すればいいのだが、個人的にその言葉では表現し尽くせていないと感じている。それは、生々しいという言葉が、巷では普及している意味とは少し異なるためであり、KSもしょせんそういうものかと思われてしまうためである。おおよそ生々しいというとき、解像度が高いがゆえ「そこで鳴っている」という意味で使われたり、迫力を演出することによってライブ感があるという意味で使われているように個人的には感じている。KSのそれは、そうした意味における「生々しい」とは異なる。KSは、解像度が高いか、迫力があるかで言うと、少なくともそこに特化はしていない。例えばHiFiMANのHE1000 UNVEILEDは、解像度は非常に高いと思うしEmpire Ears Odin(初代を指しています)は低域を中心としたパワーがあると思う。が、そういったベクトルではない。粒立ちを表現することによって解像度を磨き上げ、それが「生々しい」や「そこで鳴っているように感じる」という感覚を覚えることは不思議ではないし、私も経験がある。同様に、低域や迫力、パワーを演出することによってライブ音源の熱気や、一緒にその場で楽しんでいるように感じることも間違っていない。

話を戻し、KSが持つ「生々しさ」とは何かと言えば、それは音の実在感であり、音のリアリティである。デジタル的で、解像度を重視し、どこまでも美麗に鳴らそうと努めているような最近のHiFi傾向とは対極である。どこまでもアナログで、音をなるべく裸のまま届けよう、その録音に込められた熱量や想いを復元しようとする意図を感じる。結果として、帯域別のバランスな偏りがないだけでなく極度にクールに振ったりとことんウォームに丸く収めることもない。そして、デジタルじみた、音としては綺麗だが平面的に鳴っているという感覚もない。ただただ、音楽が音楽として身体に浸透してくる。そしてこの実在感、リアリティという部分は、音響核であるPenetrated Rectangle/Lによってぐんと引き上げられたと言っても過言ではない。実は、音響核であるPenetrated Rectangleは後付けで購入し、もともとはKSと100millionで使っていた。音響核を装着していない状態でさえ、BSからするとすさまじいグレードアップであると感じていた。もう1枚、壁がなくなったなと感じたのである。そしてあるときに、HP-Genuineに音響核Penetrated Rectangleが付いた状態でKSを試聴させていただく機会があった。その際、音響核の威力を思い知った(そして購入に至った)。おそらく、GenuineにPenetrated Rectangleをつけてこの音であれば、100million/SolにPenetrated Rectangleをつけたときの感動値はすさまじいものになるだろうと直観したのである。Penetrated Rectangleを装着した100millionでKSを聴き、その直観は当たった。さらに壁が1枚なくなり、音楽が音楽という実体感を伴ってよりダイレクトに浸透してきた。特にライブ音源や生演奏の録音においてはもはや”そこで聞いている”という感覚になった。実体感が強まると、楽器の音色だけでなく、ボーカルの情緒やその場の雰囲気などもよりはっきりとダイレクトに感じられるようになった。正直、RK-Silver/KS + 100million/Sol + Penetrated Rectangleの組み合わせに勝るものはないと心底感じることができたし、このレベルの感動は本当に久しぶりに味わうものであった。

私たちは、イヤホンを通して音楽を聴いている以上、特定のデジタルデータから聴いている。そしてそれは、この耳で生で普段から聴いている音とは異なる。KSというイヤホンは、それをなるだけこの耳で聴く音に近くしてくれる。鳴っている音をよく見せようという意図は一切感じられず、ただそのままの音を届けてくれる。それは、録音であるにもかかわらずこの耳で実際に聴いているようなリアリティにつながる。そしてそれが、その場の録音が捕えたアーティストの情緒や感情を伝達してくれる、という事態につながる。強いて言えば、生演奏の録音ではなく、そもそもの楽器音源がデジタル化されて収録されているPCソフト等で作られた音源ではこの強みを実感しづらいかもしれない。が、録音環境の良いスタジオアルバムやライブ音源では、いかんなくその素晴らしさを発揮する。私はEva Cassidyが好きでライブアルバムをよく聴くが、Live At Blues AlleyのFields Of Goldなどは凄まじい事態になっている。おそらくその場で実際に彼女の歌声や楽器を聴いていた人と限りなく近い音を聴くことができていると感じる。

聴こえてくる音は普通だが時として現実との幕が壊れる時がある、という事態は、確実に音楽体験のステージを上げてくれる。本当の意味でその場で音楽を聴いている感覚、これはぜひ一度体験していただきたい。イーイヤホンさんのKSのレビューにもあるが、いろんなハイエンドイヤホンなどを試してきてそれぞれの個性はわかるもののどれもいまいちしっくり来ないという方は特に一聴をおすすめしたい。

タイトルとURLをコピーしました